自律訓練法に挑む③

訓練を始めるにあたって周囲の環境は大切だ。
慣れないうちは出来るだけ自分が落ち着ける場所を選らんだ方が良い。

時間帯は朝食後、昼食後にそれぞれ10分間訓練を行った。
自分にはその時間帯が一番リラックス出来、また訓練もうまくいった。

「気持ちが落ちついてる」の背景公式から「手足が重たい」「手足が温かい」の第一、第二公式まで完全にマスターするのに3カ月かかった。

最初は「気持ちが落ちついてるのかな?」「手足が重たいのかな?」と疑問を持ちつつも、とにかくバカになってひたすら頭の中で念仏を唱えるように続けた。

そうすると少しづつ手足が本当に固くなったり、下に沈んでいく感覚が現れはじめた、そう重感まではすんなりいけたのだが、最初の壁は温感だった。

暗示の力で果たして本当に手足が温かくなるのか?半信半疑たったがやはりこれも計らいを入れずとにかく手足の反応がどうあれ繰り返すのみだった。

そして、ある日突然急激に手がぽかぽかとハッキリ感知できるほど温かくなった!
これはすごいと思い、自律訓練法の効果、信憑性を身をもって体感した時だった。
同時に暗示というものが本当にあることも自分の身体をもって証明できた。

しかしながら喜びは束の間、とたんにまた反応があらわれなくなった、あまり期待すると力んでしまって良くないらしい、その日の体調にもよるが気持ちの持ちようによってもかなり影響するようでなかなか難しい。

やはり初心に戻りバカになってひたすら訓練を続けるのみだった。
回数をこなし3ヶ月ぐらいから重感はもちろん温感までかなりの高確率でうまくいくようになった、そして、温感が定着したぐらいから体調も少しづつ上向きになった。

温感訓練までできるようになるとけっこうな催眠状態に入ってるようで、その際の「気持ちが落ち着いてる」の暗示は更に自分の中に入り込むのを実感した。

驚いたのは会社の全体集会の時、いつものように対人恐怖で周りに人がいて不安で落ち着かなかったが、心の中で「気持ちが落ち着いてる」と唱えると、本当に落ち着いてしまって、普通にその場にいられるようになったのだ。
普通と書いたがその時はじめて「これが普通の感覚なのか!」と普通を体験できた、普通の人間は当たり前にこんな感覚でいられるのか!?
自分にとっては安定剤か酒を飲むことでしか得られなかった感覚を素面で体験できたのでこれが「普通」とは言え嬉かった。

継続は力なりで、暗示を唱えれば自動的に反応する身体になり、訓練をしてないときでも気持ちの落ち着きが持続するようになっていった。

精神安定剤の減薬も順調に進み、人生に希望が見えてきた。

次回に続く